例えば『ウルトラマン』では、今でいうメディアミックスの先駆けとして、当時複数の漫画家による漫画版の『ウルトラマン』が漫画雑誌で連載されていたのだが、そこで漫画を担当していた漫画家の一人が、後に『まことちゃん』(1976年)『漂流教室』(1972年)などでギャグ漫画・恐怖漫画の代表的作家として、名を残すことになる楳図かずお氏だった。

楳図氏は、貸本時代から培ってきたその独特の画風と擬音、コマ運びや感覚的な作風で、つのだじろう氏と共に70年代には恐怖漫画というカテゴリの構築に貢献して一時代を築いたが、ブレイク前にウルトラマンの漫画を描いていたことは、ウルトラファン以外にはあまり知られていない。

水木しげる氏のような、日本的な民俗学的恐怖妖怪ではない、西洋風オカルティックな恐怖を得意としてきた楳図氏ではあるが、ウルトラマンのコミカライズという仕事はその資質と見事にマッチしていて、『バルタン星人の巻』『メフィラス星人の巻』などは、ウルトラマンの漫画化というよりは、もはや円谷と楳図氏によるコラボレート漫画といった雰囲気を醸し出していた。

その中でも特筆すべきが、本話の漫画化『ドドンゴの巻』であっただろう。

元々楳図氏は『怪獣ギョー』『ガモラ』『原始怪獣ドラゴン』などの、怪獣漫画を貸本時代に執筆しており

特に『怪獣ギョー』などは、ひ弱な主人公の少年と、少年が見つけた古代魚が巨大化したギョーとの物語であり、それはまさに「巨大な怪獣と矮小な人間の閉じた関係」でもあるわけで、楳図氏がコミカライズしたウルトラマンの漫画においても、『ヒドラの巻』『ガヴァドンの巻』『ジラースの巻』『ドドンゴの巻』など、怪獣と人間の閉じた関係性を描いた話が、率先して漫画化されているのが分かる。

実際、楳図氏は後年のインタビューで、ウルトラマンの漫画化において一番印象的だったエピソードに、この『ドドンゴの巻』を挙げており、この話はその後独自の脚色で、楳図氏によって長編オリジナル作品にリメイクされていたりもする。

怪獣物というジャンルにおいて、このマクロとミクロの対比という図式は、ドラマを作る者にとって大変魅力的な要素であり、それは、作劇スキルの高低やドラマの出来不出来と関係なく探せば、第二期・第三期ウルトラにいてもドラマ構築の基本であり続けた。

「巨大な怪獣と、小さな存在との閉じた関係性」「科学捜査で事件を追い詰め解決するも、解けない謎が余韻を残す」見事に融合したこの二つの要素がもたらす雰囲気が結実して、2クール以降の『ウルトラマン』では、表立ったテーマになっていく。

それはひょっとしたら、本話でメガホンを取った、円谷一監督によるプランニングだったのかもしれない。

円谷一監督はもちろん『ウルトラQ』『ウルトラマン』においては、実質的なプロデューサーでもあり、最高意思決定者でもあった。

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