きよの「先週末に『鈴木さん』っていう映画観たんですよ。現人神である「カミサマ」が国家元首で「美しい国」を標榜してる某国が舞台で。その国では、男女関係なく45歳以上の未婚者は市民権を剥奪されて、街を出るか軍に強制入隊で前線に送られるんです。今の自民党が目指してるのって、大袈裟じゃなくこれだと思いました」
大賀「それ、還暦になった老人に黒いちゃんちゃんこを着せてガソリンかけて燃やす社会になった、永井豪氏の漫画『赤いチャンチャンコ』や、藤子不二雄が『ソイレントグリーン』に影響されて描いた、高齢者福祉を全て断ち切る『定年退食』って漫画のまんまですね。盗作とかではなく。皆思うところは同じかと」
きよの「最近だと、浅野にいおの短編『テンペスト』なんてのもありましたねぇ。マトモな頭の人間が今の自民党の行く末を見れば、大体こういう答えに辿り着くでしょう。そんなに難しいクイズじゃないんです……」
大賀「道具は使い方次第で社会をよくもわるくもするというのは定番のSFテーマですけれど、一本しかないルートを辿っていれば、辿り着く「その先」は、当たり前に一つで同じなんですよね」
きよの「まぁ、SFとしてはよくある設定ではありました。でも逆に言えば、国家権力の暴走のゴールって、おさだまりなんですよね……驚くほど同じ場所に着地する。まともな芸術家なら容易くわかることだと思いますが、ただいつの時代にも、体制に積極的におもねる芸術家はいた。歴史は繰り返しですね…」
大賀「むしろ、僕が尊敬する映画監督は、チェコの独立運動におけるミュシャを例にして、僕に「表現者は政治と関わるべきではない。賛同も反体制も意味はない。ただひたすら、人間の内面と狂気に向き合うべきだ」と言われました。漫画家が政治家になるなんて、30年前の本宮ひろ志かと、笑ってしまいました(笑)」
きよの「人間の内面と狂気をひたすら追求することは、結果的には人間の自由の追求そのものなんですよね。芸術って、本質的に国家権力とは非常に相性が悪いもんだと思っていますし、そういう表現が私は好きです。その上で、今つくづく考えさせられるのは、やはり今なお先が見えない新型コロナウィルスに関してなんです。ついに宇宙に民間人が「遊びに」行く時代になったと思ったら、たった一つのウィルスが一夜で世界を変えてみせた。千分の1mmのウィルスがですよ? 既存の価値観の全てを瓦解させたんです。無数の人々の死は厳粛に受け止めなければいけませんが、非常に興味深い時代になったと思います」
大賀「果たして、来るべき社会は、withコロナなのか、afterコロナなのか、その世界は私達の「国」を、どちらへ向けて変えてしまうでしょうか。今回はきよのさんにお付き合い頂きありがとうございました。さて、今日はそんなところです」