超合金 ウルトラセブン GA-96 ポピー 1978年 1300円
首都圏数か所のデパート玩具売り場で、単品でひっそり試験販売されたこの玩具が、その後半世紀近くもの「ヒーロー玩具」の歴史的転換になった。
それは「合体や武器発射ギミックが事実上のメインではない、アクションポーズが取れることが目的のヒーローフィギュア」であり、しかも、変身サイボーグ1号のような、素体にスーツを着せるのではなく「ディテール関節型」のマスコミアクションフィギュアでは、後述するが歴史の始まりであった。
同じような概念のアクションフィギュア化シリーズでは、タカラの『鋼鉄ジーグ』系マグネモ商品が1975年から多少展開していたが、そちらはあくまで磁力での関節保持であり、シリーズも限定され短期間で終わり、また、旧バンダイが70年代中盤から『超電磁ロボコン・バトラーV』(1976年)等で「ジョイントモデル」という、可動ロボットモデルを展開させたが、こちらも短期間であり、ただロボット系がメインということで、特殊なシリーズとして今回の流れとは別個に記憶しておきたいシリーズである。
まず、この商品が画期的だったのは「超合金ブランドで、ヒーローをアクションフィギュアとして商品化したこと」これに始まるだろう。
これまでにも超合金ブランドは、おそらく『仮面ライダーアマゾン』(1974年)を最初に「ヒーローの超合金」という捻じれた商品カテゴリが発生してはいたわけだが、しかしその先鞭の仮面ライダーアマゾンは「超合金なのだから」という理由で、なぜか両手がロケットパンチになって商品化されていた。
ここは個人的な思い入れだが、筆者自身は前回も語ったように、昭和40年代の少年期から徹底して「アクションフィギュア派」だったので、そもそも超合金自体、膝が曲がって肩が回る程度の可動で、後はロケットパンチが猫にも杓子にも付けられていて、しかし「それ」が付くと、確実に肘の関節は設置されないので、どうにもこうにも不愉快な少年時代を過ごしていた。
「そこ」から上の超合金ウルトラセブンへ行くまでのワンクッションが、仮面ライダーアマゾンの翌年からスタートした『秘密戦隊ゴレンジャー』(1975年)の、5人の主役の超合金だった。
写真を見てもらえれば分かるが、ゴレンジャーの超合金は、ロケットパンチや合体ギミックがない代わりに、肘が曲がり上腕が回転し、両足の付け根が動き膝が曲がる、準アクションフィギュア仕様になっていた。これにはそれなりに感動したが、筆者の「アクションフィギュアに求めるポージングの順序」で言えば、個人的には「1・肩の回転 2・肘の曲がり 3・脇が開く」なのだ。下半身が棒立ちでも、腕がそこまで可動すれば、遊ぼうと思えば遊べるのが「ごっこ遊び」なのだ(だからガンプラでも、最初期の1/100ガンダムは全然受け入れられたのだ)。そういう意味で「脇が開かない」超合金ゴレンジャーは、筆者的には「まだまだ」の域を出なかった。あの頃筆者は既に、変身サイボーグ1号の洗礼を受けていたのだから。
その後も、ゴレンジャーのフォーマットで、超合金でヒーローが作られるケースも増えてきていた(『忍者キャプター』『カゲスター』等々)が、その先で徹底的に余計なギミックを排して、フルアクションにトイとしてのバリューを全振りしたのは、この超合金ウルトラセブンだった。
だから、売り出す旧ポピーにしても、前例の無い英断と実験だったのだろう。無理矢理(上層部への言い訳なのか)頭部に刺したアイスラッガーを、背中のボタンを押すことで発射可能にして「スプリング発射ギミックはあります」のアリバイだけは確保されている。
しかし「超合金の基本サイズだから」なのか、全長は14㎝と、ちょうど展開中のキングザウルスシリーズの怪獣ソフビとぴったり合うスケールで作られている(これ、今回長々と「ウルトラセブンのフィギュア史をなぜ辿るのか」への到達地点への一つ)。
そして、手首の回転、肘の曲がり、上腕回転、脇の開き、首の回転、腰の回転、両足の付け根、両膝、合計12か所の可動ギミックで構成されている。
前回「なぜかウルトラマンシリーズのヒーロー玩具が発売される時は、ウルトラセブンからが多い」と書いたが、一応この商品は、GAナンバーではウルトラマンの方が先に来ているが、それはメイン商品だけが入った縦長箱の試験販売版がセブンであり、そのセブンがある程度(昔から、筆者のような好事家はいたのだ!)旧ポピーが思う以上に売れたため、急遽商品の見栄えを立て直し、怪獣消しゴムを同梱させて、箱のボリュームをカサマシして、一般流通版になるにあたって、ウルトラマンの方が番号が若く設定されたと思われる。
その証拠に、旧ポピーの合金玩具としては、マシンの場合のカテゴリ、ポピニカシリーズにおいて、1978年には、一気にPB-74 ウルトラホーク1号、PB-75 ウルトラホーク3号、PB-76 ポインター、PB-77 マグマライザーと、なぜか『ウルトラセブン』(1967年)のウルトラ警備隊メカだけが商品化されたことが挙げられる。
同じ「特撮の超合金」としては、ウルトラセブン発売以前に、「メカの怪獣」ということで、メカゴジラがGA93、キングジョーがGA94で先に発売され、これらはキングザウルスシリーズの上位互換版と思われるが、その後のウルトラマンがGA95、そしてウルトラセブン、三つめが、このシリーズが想像以上に売れまくったため、金型をゼロから作り直す余裕もないまま、強引にウルトラセブンのボディにカラータイマーだけを埋め込んだ急場しのぎのウルトラマンタロウが、GA98で販売された。
ここで確立されたフォーマットとノウハウを生かす形で、1979年には現在進行形のヒーロー商品化ということで、GB04でザ★ウルトラマン、GB12でスカイライダーが発売された。翌1980年には、ウルトラからは当然新規ヒーローの『ウルトラマン80』が発売されたが、原型はオリジナルだが、ここまでのノウハウを生かした新規金型商品のGB16『電子戦隊デンジマン』が、そのまま戦隊シリーズの毎年の定番商品としてレギュラー入りを果たし、超合金戦隊ヒーローは1997年の『電磁戦隊メガレンジャー』まで続く。
とにかく、この「超合金ウルトラセブン」が、その後半世紀に渡る、日本のヒーローフィギュア業界で、天下を取る前の歴史を辿るのである。