そして、Gアーマーは、ガンダムとの縦横無尽な合体ギミックが活かされただけはなく、第36話『恐怖! 機動ビグ・ザム』では、キーキャラクターのスレッガーの、自決を含んだ戦略論にも活かされている。

作画を完全リファインした劇場用映画『機動戦士ガンダムⅢ めぐりあい宇宙編』(1982年)では、Gアーマーは登場せず、代わりにコア・ファイターを使用した支援戦闘機コア・ブースターに出番を変わられているが、実はソロモン戦でのスレッガーの特攻は、Gアーマーでないと話が成り立たないのだ。Gアーマーはガンダムと合体した状態で機動する。つまり、対ビームバリアで長距離攻撃が効かないビグ・ザムに対して、なんとしてでも白兵戦が可能な近距離までガンダムを無傷で運び入れる必要性を感じたスレッガーが、ガンダムを収納したGアーマーで特攻をかけるからこそ、自分が死してなお、アムロのガンダムをビグ・ザムの至近距離まで届けることが出来たという流れがあり、映画版のコア・ブースターでは、テレビ版を観ていないと、スレッガーが、ただの間抜けで向こう見ずな粗忽ものになってしまい、「哀しいけどこれ、戦争なのよね」の名台詞の重たさも変わってしまう。

そういった「映画における改変のアレコレ」も書きたいところではあるが、今はまずは玩具の話であり、そういった“富野流メカ演出”を請けたからか、富野監督にとっても、クローバーにとっても、一番のライバルであり宿敵でもあった、ポピーが提供して、大々的に超合金を商品展開していた、長浜忠夫監督の『未来ロボ ダルタニアス』(1979年)が、今一歩ブレイク&ヒットしきれなかったからか、クローバーのクリスマス商戦用のメイン商品、ガンダムとGアーマーの合金玩具をセットにした「機動戦士ガンダム DX合体セット」が「ガンダム、パワーアップ!! すごいぞ!! 夢のスーパー合体!」なるキャッチコピーで売り出され、販売成績が好調で、急激に『ガンダム』は売り上げを伸ばした(結果、クローバーの売り上げ利益は、前年比の200%を記録している)。

泥縄のような話だが、売れると分かったら何も打ち切る必要もないとばかりに、クローバーは当初の予定通りの放映期間へと戻す案を打診したが、時既に遅く、ガンダムは打ち切り決定通りの全43話で完結することになった。

ブライト「……。ガンダムの性能をあてにしすぎる。斗いは、もっと有効におこなうべきだ」
アムロ「……!? な……なに?……」
ブライト「甘ったれるな! ガンダムを任されたからには貴様はパイロットなのだ! この船を守る義務がある!
アムロ「やれるとはいえない。……けど……やるしかないんだ!」

次回「『シン・機動戦士ガンダム論!』第7回『テレビから映画版へと「翔んで」』(前)」
巻き起こり始めたガンダムブーム。『ガンダム』の何がティーンズをそこまで熱狂させたのか?
君は、生き延びることができるか。

(フィギュア再現画像特殊効果協力 K2アートラクション)

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