三留 そう、そういう人。そういう「おせっかいな人」が、いなくなっちゃったんだよね。だから学生が「せんせー。何を観たらいいのか、ボクタチ分かんない」って言ってきたときに「そうか。お前たちには“そういう先輩”がいないんだな」と思っちゃった(笑) だけれども、その時に(生徒に)言ったのは「自分の嗅覚を大事に。『観たい』と思って興味があるなら、その映画を観ればいい、それだけだよ」って。昔の映画ファンだったらもっとどん欲に、次から次へと食い散らかすように映画を観まくってたんだけれどもねぇ。今の子は一本観れば、それで満足して終わっちゃうような感じ。そこで観た映画で、出ていた俳優を気に入ったのなら、同じ俳優が出ている他の映画を観ればいいわけだし、それは監督とか脚本家で「次に何を観るか」を決めてもいいわけじゃない? 私たちはね、いつも飢えてたんだ。飢餓感があったんだ。「いつか映画が観られなくなっちゃうかもしれない」っていう。「今は名画座にかかってるけれども、この映画は今を逃すと、もう二度と観られないかもしれない」ってね。

大賀 だから、ビデオデッキの功罪って、両方大きかったですよね。

三留 そうそう。「持っていれば必ず(いつでも)観られる」っていうのがね。その飢餓感を消しちゃったんだよね。でもむしろ、そこで安心しちゃうと一生観ないね(笑) とにかく結論としては「たくさん観て、たくさん読んで、たくさん聴いて」なんだよね。そこまでやって、初めて「自分にとっての“面白さ”」の基準が出来る。それをやらないと、逆に簡単に「感動しました」とか、言えちゃうわけよ。

大賀 三留さんはそれでも。これからも『ファントム』を、追いかけ続けますか?

三留 うん。まだまだだと思う(笑) 一生物だよね。

(2019年1月10日 西葛西ジョナサンにて収録)

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