ガンプラ! あの熱きガンダムブーム。あの時代を生きた男子であれば、誰もが胸高鳴り、玩具屋や文房具屋を探し求め走ったガンプラを、メカ単位での紹介をする大好評連載。

ティターンズを牛耳った「木星帰りの男」シロッコが、最終的に乗り込む重モビル・スーツ、それがジ・Oだ!

私、市川大河が、富野由悠季監督作品に登場するガンプラを、 古い物から最新の物まで片っ端から紹介していこうというテーマのこの記事。
今回紹介するのは、ガンプラでは初キット化になる、『機動戦士Zガンダム』のラスボス、HGUCのジ・Oです!

ジ・O 1/144 HGUC 036 2002年12月 2400円(機動戦士Zガンダム)

威風堂々と煽りで描かれた、ジ・Oの立ち姿のボックスアート!

それは『機動戦士ガンダム』に限らず、『ウルトラマン』『仮面ライダー』等でもそうなのだが、次の年、つまり現在進行形で放映しているシリーズの最終回の翌週から新番組がはじまる場合、スポンサーの玩具展開は、いち早く次の新番組の門出を祝い儲ける形でシフトが組まれ、終わりゆく番組のラスボスは商品化されないことが多い。

その典型例が今回紹介する『Zガンダム』ラスボスのジ・Oであり、『Zガンダム』クライマックスでは、かなり以前から武器類を除いて金型が作られていたと言われるパラス・アテネと、スケールカテゴリは1/220シリーズに収められたが、かろうじて立体かはされたキュベレイ等と比較すると、このジ・Oはリアルガンプラとしては長年一度も商品化されず、放映後15年が経った今回のHGUCが初で、その後は訳アリ物件化したMGが2010年に発売されるだけに留まる。

完成したジ・O。1/144とは思えないこの重量感!

ジオのデザインを担当したのは小林誠氏。
小林氏はミリタリーに造詣が深いので、モビル・スーツをデザインする時も、鋳造表現等を取り入れたり、自分で模型をモデリングする時もWWⅡ時代の兵器の表現を取り入れるなど、かなり個性が強いデザイナーである。
『Zガンダム』では他にバウンド・ドック、ガザC等をデザイン。次番組『機動戦士ガンダムZZ』では、企画初動で永野護氏の後を引き継ぐ形で主人公メカガンダムZZのデザインに関わるが、結果としてはこの小林案も却下されることになる。

グリプス戦役クライマックスを、進撃する巨体のジ・O

一見するとガンダムシリーズのメカデザイン路線に相性が悪いように見える小林氏のデザインラインだが、『Zガンダム』自体がありとあらゆるメカデザイナーの個性を混沌のまま飲み込むというメカ演出コンセプトがあった前提であれば、小林氏なりの「ガンダムのラスボスモビル・スーツ」観を、ジ・Oから見出すことはできる。
ジ・Oが持つ個性の、事実上の「シリーズ最後の、倒されることで終劇するラスボスメカ」という立ち位置といい、ネーミングの韻の踏み方といい、「歩行することを前提としていないデザイン」といい、ジオングを意識していると思える。

完成したジ・Oの正面

ジ・Oはラスボスだが、ニュータイプ用モビル・スーツ御用達のファンネルもないしシールドすらない。百式やゼータガンダムのように、大出力のメガ粒子砲を手にすることもない。

完成したジ・Oのサイドビュー

背中を見ても、この時期までの流行だった「巨大で複雑な構成のバックパック」も「長時間稼働を視野に入れたプロペラントタンク」も配置されていない。

完成したジ・Oのバックビュー

ジ・Oの「ラスボスとしての特性」を一言で表すのであれば「俊敏なデブ」これに尽きるだろう。
『Zガンダム』ラスト、シャアの百式とハマーンのキュベレイとシロッコのジ・Oの三巨頭がコロニーレーザー内で三つ巴の決戦を繰り広げるが、3機ともそもそもシールドを装備していないモビル・スーツであり「敵の攻撃を受けて防ぐ」のではなく「優れた機動性で、敵の攻撃を交わしきる」戦法で設計されていることが明白だ。

『Zガンダム』クライマックス。コロニーレーザー内でのジ・Oの脅威!

そんなシロッコの乗るラスボスモビル・スーツ、ジ・Oはファン長年の切望を受ける形で、2002年にHGUCで初キット化されたが、HGUC初期としては、かなり傑作の部類に入る出来になっている。今回はそんな傑作キットを紹介していこう。

両腕の可動領域

まず恒例の可動チェックだが。両肩は、水平までは上げられないものの、元のメカデザインがかなり邪魔をしていたこともあり、今回はその肩アーマーをブロックごとに別パーツにすることで70度近くまでの肩開きが可能になっている。
また、このボリュームの肩だが、前後にスウィングする可動も追加されている。
今の目で見ると狭い可動範囲かもしれないが、力士のようなジ・Oの体型からすれば、よくもまぁ動く方だと驚嘆させられる。

肘の可動

肘はぴったり90度。さすがにこの時期のHGUCで二重関節や折り畳み肘関節等は導入されていないが、そんな可動範囲、ジ・Oに要る?と聞かれれば、普通に「そこまで動く必然はないなぁ」としか答えられない。というか、念願の、積年の願いの「ジ・Oのガンプラ」しかもハイエンド仕様を前にして、そんな文句は付ける隙もない。
もっともこの肘、後で塗装の項でも述べるが、前腕内側の赤いパイプの付く窪みが、パイプの色優先でまとめて1パーツ赤で成型されているので、そのままだと玩具っぽくなるので、肘関節側のカバーをボディ色で、パイプの間のスペースを艶消し黒で塗っておくことをお勧めする。あと全身のパイプは赤なので、パイプのつなぎ目に墨入れをしておくだけでもだいぶ違うので是非とも一手間いれたい箇所である。

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

おすすめの記事