野長瀬監督が夢見た「完全無欠の英雄」
山田正弘
野長瀬三摩地
高野宏一
「あー!」
「どうしたんだ? チロ」
「怪物だよ、怪しいやつ、見たんだボク! 見たよ! 見た!」
「ボク怪獣見たんだよ! 本物だよ!」
「ははははは! いやぁ坊やの話が本当だとすると……それはゲスラじゃな」
「ゲスラだって?」
「そうじゃ。ゲスラは南米に住んでいるトカゲの一種でカカオの実が大好きなんじゃ。それに、カカオの実にたかる害虫まで退治する、いいトカゲなんだ」
「つまりゲスラは、チョコレートの原料を守っているってわけかぁ」
「そういうわけじゃ、君たちがチョコレートを食べられるのもゲスラのおかげなのさぁ。しかし、ゲスラがそんなに大きくなっているなんて、考えられんなぁ」
「ではゲスラは、カカオの実を食べたくてカカオを積んだ船を襲うんですか」
「そう考えられます」
「子どもと同じですよ、チョコレートの原料が好きなんです」
「どうしたら、ゲスラの攻撃を防げるんです?」
「ゲスラの性質・弱点については、国際警察のブラジル支部に、もっか照会中です」
「次のカカオ船は、すでにこの東京湾に入り、まもなくこの港に入るんです! もしゲスラに襲われたら、いったいどうしたらいいんですか!」
「だめです! 間に合いません! ゲスラです!」
「しかし、なんだって急にゲスラの奴はあんなに大きくなったのかなぁ」
「東京湾の水には、いろんな物が含まれすぎているからな。なんだってかまわず捨てるだろう?」
「そうよ、みんなが勝手に廃液やなんかを捨てるから、こういうことになったのよ、罰ね。きっと神様が怒ったのよ」
「ゲスラは元々こんな小さなトカゲですが、大きな音や強い刺激を受けると、ものすごく凶暴になり、ジャガーにさえ向かっていって、これを倒してしまいます」
「……弱点は?」
「頭の触覚を取ると死んでしまいますが……でも、難しいですねぇ。この体の針には、人間など瞬間的に死んでしまうくらいの猛毒があるんです」
「よし! これからゲスラ防御作戦をとる!」
「あ! ウルトラマンだ! ウルトラマンが助けてくれたんだ!」