さすが、ウルトラにおいて合成技術の演出的効果を、一番に把握していたと言われる、飯島敏宏監督の作品である。
筆者の再現特撮も、いつも苦労させられるミニチュアセット組以上に、撮影した画像の合成処理や、描画処理に苦心させられることになった。
また、本話は本編解説でも述べたとおり、全編各所が疑似科学性に溢れており、それらを画像で再現することが、本話の魅力を伝える最良の方法でもあるため、コンテ段階から細心の注意を払うことになった。
まずは冒頭、ロケットおおとりの発進シーン。
おおとり自体は以前製作した『ウルトラマンA』(1972年)『超獣対怪獣対宇宙人』でマリア2号として製作した、アオシマのプラモデル・サターンロケットを、改めて白黒モノトーンに塗装しなおして使用した。
続いて、パンスペースインタープリターによって、モニターに突如出現したバルタン星人の画像。
まずソフビフィギュアを、透明塩ビで組んだ箱の中に入れて、その中にドライアイスの煙を流し込んだ状態で撮影。その画像の周囲にモニターの枠を合成して作成した。
科特隊基地に続いての、飛翔するジェットビートルカットは、HGメタルメカコレクション版のビートルを使用。
宇宙仕様ビートルは、このエピソードにおける、疑似科学性を象徴する印象深いメカでもあるため、画像は多めに用意した。
宇宙空間の描写では、背景とは合成。全てのカットで噴射炎を合成処理している。
続いて、地球上で侵略を開始するバルタン星人群。
ここで使ったバルタンに関してはアイテム解説で後述するが、様々な角度から撮影したフィギュアを、1カットにつき20体前後、全てのカットで合成をした。
劇中ではマルス133の攻撃は、コックピット内でしか描写されないので、再現画像では、三角ビートルのキャノピーにフラッシュ効果を合成することで、マルス133が発射されてるような演出を施すことにした。
続いて、惑星上でのバルタン星人とウルトラマンの戦い。
セット構築は岩山・茶土台・青空背景という構成。現れるバルタンには、逆行フラッシュ効果を合成。
アイテム解説で後述するが、スペルゲン反射光でスペシウムを跳ね返すカットと、ハサミを開いて無重力波を発するバルタンのカットは、ソフビ版ではなく、究極大怪獣版のバルタン二代目を使用している。
ウルトラマンの八つ裂き光輪は、フォトショ描画のバンクショットから。
真っ二つに切り裂かれるバルタンは、ソフビを切ったのではなく、別の角度から写した二体のソフビ写真を、左右それぞれ切り張りして表現した。
地上のバルタン群によるコンビナート破壊カットは、以前製作した『オイルSOS』のコンビナートセットの画像に、炎や爆炎を合成して表現した。
テレポーテーションカットは、背景に半身だけ合成したフィギュアの画像に、フォトショで走査線(?)を描画して表現した。
クライマックスの舞台となる空港セットは、メインの空港建造物を紙とスチレンボードで作成。
倉庫や飛行機は、既存のストックからそれっぽいアイテムを選んで、紙で切り出した滑走路上に配置している。
このシーンで印象的だった「赤い鉄塔」は、プラモデルやNゲージストラクチュアのジャンクパーツで、それらしくでっち上げて配置してみた。
八つ裂き光輪を跳ね返すバルタンのバリアや、それを破るウルトラマンの、ウルトラ眼光もフォトショップ描画。
最後はやはり、八つ裂き光輪でバルタンは切り裂かれて戦闘は終了する。
バルタン星人二代目
バルタン星人二代目は、旧バンダイウルトラ怪獣シリーズソフビのアイテムを使用した。
旧バンダイウルトラ怪獣シリーズのバルタン二代目は、今回使用した2003年版の前に、過去二回に渡って発売されている。
最初のバルタン二代目ソフビは、1989年に発売された『ウルトラ怪獣伝説』という、ソフビ怪獣とビデオソフトをセットで販売した商品において、キングザウルス三世やシュガロンと共に、ラインナップに加わっていた。
キングザウルス三世とシュガロンは、その後そのままのバージョンで、通常流通のウルトラ怪獣シリーズに加わることになるが、このときのバルタン二代目は、その後円谷プロ30周年記念ウルトラマンフェスティバルにおける、会場限定商品として販売された経緯はあるが、結果的に通常流通品としてラインナップに加わることはなかった。
今回使用したのは、2003年のバンダイ怪獣シリーズにおける、「バルタンプロジェクト」での新規造形版であり、『ウルトラ怪獣伝説』版とは全く違う造形。
その商品の出来は、ピークを更に超えて、円熟味をかもし出してきたバンダイの、隙の無い完璧な仕事ぶりが味わえるレベル。
今回は、初代バルタンのときと同じように、ハサミの内側と尻甲羅の内側を、デザインナイフでくり貫いておいた。
ちなみに、このバルタン二代目ソフビは、細部塗装を変更しただけで、『禁じられた言葉』に出てきた、バルタン星人三代目として、2003年のバルタンプロジェクトで、EXナンバー扱いで原型が流用されている。