フローティング・コマンダーの変形。
これはわりと単純に、アンテナの引き込みだけ。
脇下のアンテナの収納が、少し二重軸になっているが基本は簡単である。
サークル・リアクターの変形。
変形というほどのものではない。2本のアンテナを引き込むだけ。
ダイナ・シャフトの変形。まずは脚部の変形から。
膝を曲げて回転させると、アンテナのついた側が下に突き出て、脚部そのものはそのまま、太股部の内部に収納されるというギミック。
結果的に腰の上に、シューズがぼこっと見えてしまう状態になるが、玩具と割り切るしかないのであろう。
続けてアンテナの収納。
システムは頭部のアンテナ収納と同じ。
クルリと回る蓋のギミックは、まるで歌舞伎や演劇の回り舞台のよう。
完成状態。
まず、プロポーションは悪くない。
後述するが、本物やソフビの体型とはかなり違うが、いくつかのデザイン解釈の欠点を除けば「劇中のラテックス素材の着ぐるみのフィギア」ではなく、「異星人が作ったロボットの立体化」と解釈すれば、その硬質感も手伝って、中々見栄えは良い。
塗装の金もうるさくなく、前述したように全体の質感も統一されている。
ロボット時の胸部パネルや額の窓などは、クリアパーツ・成型色・塗装を巧みに使い分けて、劇中の怪しい輝きを再現している辺りは素直に評価できる。
ただ、合体その他のギミックには、疑問が残る点も多い。
まず一つ目に挙げられるのは、合体変形システムの統一的価値観が、そこに見られないという点。
つまり「完全変形」を目指すのか、「差し替えでも見栄え重視変形」を目指すのかが不徹底なのだ。
先述したように、手首などは差し替えを行っているにも関わらず、足首などは、差し替えをしないで無理矢理収納させようとした結果、円盤時は腰の上から見えてしまっているという中途半端さが目立つ。
それがなぜこうなったかを、筆者なりに考えてみた。
まず結論から言えば、このアイテムは完全変形アイテムとしては不可能なのだ。
キングジョーがデザインされた頃は、玩具化などは前提にされておらず、その変形は、特撮ゆえの嘘にまみれていて、それゆえ魅力があるのがキングジョーなのだ。
重箱の隅を突付けばそもそも、伸縮で収納される脚部が、折りたたみで収納されている時点でもう「完全再現」ではない。
だからといって、折りたたみ収納を否定する気は毛頭ない。
太股に収納される前提で、設計された脚部は、ロボット時でも太股からのラインを崩すことなくシルエットを形成しており、収納クリアランスを緻密に計算したバンダイ設計担当の努力は、相当に評価されるべきであろうと筆者は思うのだ。
問題は設計ではなく、商品コンセプトであろう。
キングジョーの変形を再現するには、完全変形は無理な話なのだ。
ではなぜバンダイは、潔く差し替え変形に徹することなく、このような中途半端な変形機構を持ったキングジョーを、自社のフラッグシップブランドである超合金魂の冠で発売したのか。
それはおそらく、前編での解説の項で述べたように、この商品の仮想敵がメディコムのミラクルアクションフィギアで発売されているキングジョーであり、そのメディコム版キングジョーが潔いまでに差し替え変形に徹することで、ロボット形態と円盤形態の両方の見栄えを成立させているからで、後発のマスプロメーカーであるバンダイが、同じコンセプトで商品化するわけにもいかず、また、そもそも超合金は玩具であるとの主張があって、今回のような「不完全変形」商品になったのであろう。
しかし、それとは別個に、バンダイの超合金魂なりのコンセプトを理解したとしても、例えば合体時のシステムなどには、言い訳の出来ない稚拙さが残る。
本商品の合体箇所は三箇所であり、そのうち二箇所がマグネットによる、接合方式をとっているのであるが、この磁力がすこぶる弱い。
特に胸部(フローティングなんとか)は合金製であり重量もあり、とてもではないが、マグネットの磁力で持ち上がるものではない。
そもそもこのような商品において、接合にマグネットを使うというケースでは、その選択理由に「接合部に無粋な接合ピンなどを露出させたくない」といった、見栄え重視の根拠があってしかるべきであるにも関わらず、本商品では、マグネットを使用している接合部においても、そもそも接合面がツライチなどではなく、アンテナ収納部や接合パーツが露出しているのである。
それならば、最初から接合ピンでそれなりの合体強度を確保すればいいわけで、この辺りも先行していたメディコム版辺りから、いくらでも学び取れただろうに、そこは残念の一言である。
さて、では本商品最大の欠点である、可動について語りたい。
最初に断言してしまえば、本商品はアクションフィギアではなく、あくまでも「合金製合体ロボット玩具」と割り切らないと、購入したファンが感じるのは失望だけであろう。
確かにいまどきの合体ロボット玩具は、昨今の流行を取り入れて、アクションフィギアとしてのプレイバリューを持ち合わせていて、それはこれまでの超合金魂のシリーズでも基本特性としてあったはずなのだが、なぜか今回に限っては、ほとんど可動しないデクノボー状態なのである。