スーパーロボットまんがの“ヤラレメカ”の鉄則

それまでの、いわゆる「スーパーロボットまんが」は、毎回登場しては1話限りで消え去る敵のヤラレメカにも、しっかりとコンセプトワークを貫いて作品世界を構築してきたという流れがある。
多少の揺らぎはあっても、『マジンガーZ』(1972年)に登場する“機械獣”は、フリーキーな魑魅魍魎的なデザインが目まぐるしく次々に登場したが、どこか、永井豪氏というよりも、石川賢氏のデザインワークスが生み出す「メカ化したデーモン感」のようなものが、バラエティ豊かな機械獣軍団に統一性を与えていたし、その石川賢氏がメインでデザインを務めた『ゲッターロボ』(1974年)の場合は、“メカザウルス”という「恐竜+メカ」という明確なコンセプトワークが前提論として(先行する『マジンガーZ』の機械獣デザインが、あまりにもフリーダム過ぎたためか)設けられ、それは『UFOロボ グレンダイザー』(1975年)の“円盤獣”もそうなのだが、『マジンガーZ』の機械獣が、ナンデモアリな分、後発の“スーパーロボットまんが”は、逆に何か毎回のヤラレ敵メカに、統一フォーマットを生み出さないと独自性が出せなくなってしまうという袋小路に入っていた現実は確固としてあった。

なので、よく、『ガンダム』事情、『ガンダム』周辺をリスペクトとして語る際「今までは“ロボット”と呼ばれていた主人公メカに、あらたに“モビルスーツ”という言霊を与えた功績」が語られるが、それは一方ではまさに仰るとおりで異論はないのだが、一方では、むしろそこで「コロンブスの卵」だったのは、“敵と味方のロボットを、同じカテゴリで括り合う”概念そのものであった。
マジンガーZやゲッターロボやライディーンが闘う相手は、機械獣でありメカザウルスであり化石獣であるが、主人公そのものは「正義と科学のスーパーロボット」と、差別化されている。
『ガンダム』の場合、それを、「敵も味方も、同じ“モビルスーツ”という呼称の概念兵器を使い合う」世界観自体が斬新であり、過去に例を見なかっただけであり、毎回襲い来る敵ロボットが、「ロボット」ではない固有の冠(この場合、モビルスーツ)を持っていること、それ自体は、スーパーロボットまんがのお約束であり、斬新でも新機軸でもなかったことも忘れてはならない。

むしろ、日本サンライズ(当時)の社長の山浦栄二氏が、高千穂遥氏から教わった、『宇宙の戦士(原題: Starship Troopers)』のパワードスーツという概念を、当初の両者のもくろみ通りに、そのまま“宇宙戦艦が主役のSFアニメの、登場人物達が戦闘時に着込むサブメカ”として取り入れていれば、ここまで富野監督が悩む必要はなかったのだろうとは推測できる。

結果、番組制作が正式にスタートする時点でガンダムに与えられた「身長18m」という設定は、既にスーパーロボットの大きさがインフレを起こしまくっていた(ゲッターロボが38m、ライディーンが52m、ガンダムと同時代のボルテスVやゴッドシグマ、ザンボット3辺りは、50mから60m辺りが基本ラインだった)状況下で、なんとか「Suit」なる言葉の意味を破壊しないようにと、小さく設定したい制作側と、主人公ロボットはでっかくてカッコよくなければと、こちらも当然の要求を出してくる局やスポンサーとの拮抗で「じゃあせめて、この手の路線のパイオニアの『マジンガーZ』と同じ程度で」という流れがあって、18mに落ち着いたのだという逸話が残されている。

シャア「私は……これだけは私の手で倒したいと思っているくらいなのだ。子供じみているだろ? フフフフフ…… そう。私のプライドを傷つけたモビルスーツだからな」

アムロ「カイさん! どこにいくんです」
カイ「しゃあねえな。軍人なんておかたいのは、性にあわねえんだからさ」
アムロ「カイさん、ぼくはあなたの全部が好きというわけじゃありません。でも、今日まで一緒にやってきた仲間じゃないですか!」
カイ「そういう言い方、好きだぜアムロ。ま、元気でやれや」
アムロ「カイさん!」

ブーン「二番艦に水陸両用の重モビルスーツの“ズゴック”があります。こいつはあてになりますが我艦にはゴックが一機あるだけです」
シャア「それでいい。木馬の足をとめさせろ。木馬があのドックを出て、どこに向かうかを知りたい」
ブーン「はっ! さぐりは入れさせております――」

ミハル「兵隊さん!! その様子じゃ、軍艦を追い出されたのかい」
カイ「ま、そんな処だ」
ミハル「泊まるとこないんだろ? ウチへおいでよ」
カイ「いいのかい? へへ……わけありだな」
ミハル「まさか! 二、三日ならいいってことさ。あたし、ミハルってんだ。弟と妹がいるけど、いいだろ?」

シャア「一〇七号はどこにいるのだ?
ブーン「木馬のいる港です」
シャア「ゴックの攻撃をかけている間に一〇七号を木馬にもぐりこませろ」

ミハル「お姉ちゃん、仕事に行ってくる。こんどはちょっと長くなるかもしれないけど、お金は少しずつつかうんだよ」
ジル「うん、判ってるって……」
ミハル「この仕事が終わったら戦争のない処にいこうな、三人で……」
ジル「うん、大丈夫」
ミリー「姉ちゃん……姉ちゃん、母ちゃんのにおいがするんだね」
ミハル「思い出させちゃったかね、……」

次回「『シン・機動戦士ガンダム論!』第27回 スーパーロボットアニメとしてのガンダム・8」
ジオンが続々送り出してくる水陸両用モビルスーツ! ガンダムは勝てるのか!? アムロは勝てるのか!?
君は、生き延びることができるか。
(フィギュア再現画像特殊効果協力 K2アートラクション)

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