その起因としては、『ガンダム』という作品自体が(この連載で以前記述したように)ある種の戦場アンソロジードラマ風味を内包しており、作品内でのモビルスーツをはじめとしたメカの描写も、ミリタリズムとリアリズムに溢れていたため、AFVモデラー、もしくはスケールモデラーと呼ばれる、それまでは実在する戦車や戦闘機、戦艦などのプラモデルを好んでいたプラモデルマニアたちに、商品発売前から注目されていた題材であること、ガンプラを生み出した母体であるバンダイ「ベストメカコレクション」シリーズが、児童層にとってのロボット玩具としても秀逸なコンセプトだったことなどが挙げられる。

その上で、ある程度の(この時代では)自由なカスタマイズや改造が可能なプラモデルという素材が、作中の様々な名シーンや傑作メカの再現という表現を可能にしたため、色も塗れなくても、組み立てるだけなら出来る小学生層から、徹底改修や、リアルな改造まで可能な思春期以上のモデラーまで、ほとんどの男子を巻き込む一大社会現象へと発展していった、日本のマスコミ玩具(テレビキャラクターの玩具のこと)史においても真に稀有なムーブメントであったことも重要なポイントであろう。

結果、ガンプラは異常と言えるほどの販売数と商品展開ペースを誇り、模型屋で枯渇したガンプラを求める男子たちが、様々な店舗やデパートに押しかけ、ブームピークの1982年1月には、千葉県の大型店舗で、ガンプラを買うために開店から並んでいた少年たちがエスカレーターに殺到し、転倒事故が起きて、19人が重軽傷。その中で10歳(当時)だった少年が後日死亡するなどの、痛ましい事故も起きるほどの過熱ぶりは、当時現在進行形であった劇場版『ガンダム』だけではなく、その後の続編、シリーズ化、ジャンル化にまで影響を及ぼした。

『機動戦士ガンダム現象を解析する』をテーマに掲げたこの連載が、作品とそのブーム現象の推移だけを追って、このガンプラに触れないというのは、はなはだ画竜点睛を欠く行為でもある。
なので、今回から『シン・機動戦士ガンダム論』では、3回に分けて、今回の連載で名場面再現にも使用しているガンプラの歴史や流れを紹介することで、現象そのものを史実という流れでより深く、言及してみたい。

その上で、今回の連載で行われている名場面再現での素材が、意外と最新のガンプラばかりではなく、35年以上前の物も含まれており、しかし現代の最新キットと並べても違和感少なくまとまっている、傑作キットも多いということを、ビジュアル的にも理解していただこうという趣向である。

また、今回の連載『シン・機動戦士ガンダム論』と並行する形で、エンターテイメントメディア・Middle Edgeさんの方で『ガンプラり旅』という連載を始めさせていただいた。
そちらでは、こちらの『シン・機動戦士ガンダム論』連載とリンクする形で、この連載で使用した数々のガンプラを、個別に紹介していく予定である。
なので、文章記述も重複してしまう部分もあるかと思うが、どうか、今回から6回ほど、ガンプラ与太話にお付き合いいただきたい。

アムロ「うわ……殴ったね」
ブライト「……殴ってなぜ悪いか! 貴様はいい。そして、わめいていれば、気分も晴れるんだからなァ」
アムロ「ぼ、ぼくが、……そんなに安っぽい人間ですか!」
アムロ「二度もぶった! おやじにもぶたれたことないのに……」
ブライト「それが甘ったれなんだ。殴られもせずに一人前になった奴がどこにいるものか」
ブライト「アムロ。今のままだったら、貴様は虫けらだ。それだけの才能があれば、シャアを越えられる奴だと思っていたが、残念だよ」
アムロ「シャア? ……ブライトさん」
フラウ「アムロ……」
アムロ「くやしいけど……。僕は男なんだな……」

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