それゆえ、ギガスとドラコの挙動には、未知の状況に対する戸惑いがしっかりと特撮レベルで描かれ、だからその戦いも、多々良島の弱肉強食死闘のような、日常的な形ではなく、科特隊による誘導作戦のような形で巻き起こるのである。

しかし、そこに現れたレッドキングは、まさに「戦うために生まれた戦士」とばかりに、指を人間臭く鳴らして二大怪獣の死闘に割って入り、すぐさま主導権を奪ってしまう。

「怪獣の意思に関わらず、怪獣が人間の開発した爆弾を身につけてしまっている」は、既に『大爆発5秒前』で描かれたし、その後も『帰ってきたウルトラマン』の『怪獣時限爆弾』などで、便利に使われていくシチュエーション設定になるのだが、本話では特に、好戦的で制御不能な最強怪獣・レッドキングに、その役が振られているのが秀逸なポイントになっているのだろう。

そこではツイフォンは「人類が互いを潰しあうために開発した水爆が、天に吐いた唾のように、人類未曾有の危機を飛び覚ますきっかけ」でもあったわけだが、そのアイロニカルな部分も含めて、ドラコを送り込んだ意味も含めて、再来訪が1060年後という数字に至るまで、そこまでの様々なドラマ構成要素には、ツイフォンに対して、まさに「想像を絶した影響力」を感じ取ることが出来、そして「それを迎える人類の持つ物差し」が、いかに小さく役に立たないかを感じさせてくれる。

だからこそ、そんな「人類の物差しが全く通用しない状況」を、颯爽と現れたウルトラマンが解決する姿が、何よりも頼もしく見えたのである。

飯島監督は(高野宏一特撮監督との綿密な打ち合わせゆえだろうが)、『科特隊宇宙へ』で生み出したウルトラマンの新必殺技「八つ裂き光輪」を巧みに使い、ツイフォンの怒涛の「状況」に、振り回されるしかなかった劇中の登場人物や我々視聴者の、想像を超えた解決法で、人類存亡危機的クライシスに、見事な決着をつけてしまった。

そもそもスペシウム光線を生み出したのも飯島監督だが、飯島監督の「ウルトラマンの超能力に対する発想の自由さ」は特筆すべきであり、『ウルトラマンコスモス THE FIRST CONTACT』(2001年)や、『ようこそ!地球へ』などと共に、本話ではその「万能なウルトラマンだからこそ起こせる奇跡」に溢れている。

金城・上原コンビが土着的な秘境への傾倒で描いた『怪獣無法地帯』は、たとえウルトラマンがレッドキングを倒したとしても、やるせない余韻に包まれていたが、本話の爽やかな余韻は、またこれも『ウルトラマン』という物語に必要な、それまでの少年向け活劇ヒーロードラマにはない幕引きだったのかもしれない。

お正月の元旦から、家族や新春イベント、正月スペシャル番組全てを跳ね除けて、『ウルトラマン』を選び見入った子どもにだけが、その爽やかさを味わえたのだろう。

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